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天井クレーン無線化の注意点

無線操作式クレーンの安全に関する指針

無線操作式クレーンの安全に関する指針
Guideline for safety of radio control type cranes

JCAS1002-2004 平成16年4月制定

1. 目的

この指針は、無線操作式クレーンの安全性の向上を図るため、クレーン等安全規則 (昭和47年労働省令第34号) 及びクレーン構造規格(平成7年労働省告示第134号) に定める事項のほか、安全上特に必要と認められる構造要件及びその管理・ 運転等について定めたものである。

2. 適用範囲

この指針は、運転者の保持する操作装置によ り、無線で遠隔操作される方式のクレーン(以下 「無線操作式クレーン」 という。)について適用する。
備考:建設工事において使用されるクライミングクレーンに無線操作方式を採用する場合には、工事の進捗により操作等の条件が変わる。したがって、クライミングの都度、この指針の要求事項への適合性を確認する必要がある。

3. 定義

a) 操作裝置
押しボタンスイッチ、ジョイスティックスイッチ等が組み込まれ、その押しボタンスイッチ、ジョイスティックスイッチ等を操作することにより、電波等による指令信号を発信する装置をいう。
b) 受信装置
操作裝置からの電波等による指令信号を受信し,操作に応じた制御信号をクレーンの制御盤に送る装置をいう。
c) 押しボタンスイッチ
ボタンをその軸方向に指で押すことにより接点を開閉し、指を離したとき直ちに自動復帰するクレーン操作用のスイッチをいう。

d) ジョイスティックスイッチ
操作レバーをX-Y軸方向に倒す角度に応じて信号を出力するスイッチをいう。ただし、スイッチから手を離した時に直ちにクレーンの動作を停止させるために、以下の一つ以上の機能を備えているものとする。
1. 操作レバーから手を離すことによりレバーが中立の位置に自動復帰する機能
2. レバーの頭部に押しボタンスイッチを備え,この押しボタンスイッチから指を離すことにより押しボタンスイッチが自動復帰する機能

4. 構造及び機能

4.1 操作装置
4.1.1 電源スイッチ
操作装置には、電源「オン」「オフ」用スイッチを設ける。
また、電源「オン」の表示灯を、操作裝置又はクレーン本体上で運転者から見易い位置に設けることが望ましい。

4.1.2 停止スイッチ
操作装置には、クレーンの動作を直ちに停止できる停止スイッチを設ける。
ただし、電源スイッチ「オフ」を操作することにより、クレーンの動作を停止できる場合はこの限りでない。
停止スイッチを解除することによって、直ちにクレーンを再始動してはならない。 再始動は始動目的で設けられたスイッチ(電源「オン」スイッチ等) を操作することにより可能とする。

4.1.3 操作スイッチ
押しボタンスイッチを使って巻上・ 横行・ 走行等の操作をする場合は、運転者が押しボタンスイッチから指を離したときに自動的にクレーンの作動を停止させるものとし、操作スイッチは不意の接触によって作動する危険を防止するため、有効な高さのガードリング等を設けなければならない。
また、押しボタンスイッチにリードスイッチやホール素子等の磁気を使ってオン・ オフするスイッチ素子を使用する場合は、強力な磁気を発生する装置の近くでの使用を禁止する注意銘板を操作装置に貼り付けること。
ジョイスティックスイッチを使って巻上・ 横行・ 走行等の操作をする場合は、運転者がジョイステイックスイッチから手を離したときに自動的にクレーンの作動を停止させるものとする。
また、ジョイスティックスイッチは不意の接触によって作動する危険を防止するため、インターロック回路等を設けなければならない。 そのインター ロック回路は、有効な高さのガードリングや、レバー頭部に設けられた押しボタンスイッチを押している間だけ信号が出力されること。

4.1.4 その他のスイッチ等操作装置には、警報用、照明用、速度切替用等のスイッチを設けることがある。

4.1.5 操作スイッチ等の表示と配列
a)  操作スイッチ等の表示は明確なものとし、表示の文字は消え難いものとする。
b)  連動方向の表示は、例えば上、下、東、西、南,北などのように移動方向を明確に指示するものとする。 なお、クレーン本体には、クレーンガーダの下など運転者が見やすい位置に、操作スイッチの方向表示のうち水平動作に対応する表示板を設ける。
c)  操作スイッチの配列は、誤操作を防ぐため同一事業所内での配列は統一することが望ましい。
d)  電源「オフ」及び停止スイッチの色は赤、黒,灰、白色とするが、赤又は黒色が望ましい。 緑は使用してはならない。

4.1.6 クレーンと操作装置の対応表示
クレーン及び操作装置には、どのクレーンとどの操作装置が対応しているのかが明確に分かるように表示しなければならない。

4.1.7 電池電源の操作装置
電圧変動が、操作装置の不安定な状態を起こしてはならない。
電圧が規定値以下になったときは、クレーンを危険のない状態(例えば、つり荷の着地、クレーンの待機位置への移動など) にするのに必要な時間は操作装置のすべての機能を動作可能としなければならない。
電圧が規定値以下になったときは、警告を発するようにする。

4.1.8 操作装置の防塵、防水
塵埃や水滴等により誤動作や感電のおそれのある場所で使用する場合には、必要に応じて防塵、防水構造の操作装置であることが望ましい。

4.2 受信装置
4.2.1 自動停止機能
受信装置は次の状況において自動的にクレーンを停止する制御信号を出さなければならない。
a)  停止スイッチの指令信号を受信したとき。
b)  装置内で障害を検知したとき。
c)  有効な指令信号が所定時間内に検知されなかったとき。

4.2.2 制御の制限
受信装置は対応する操作装置以外からの指令信号でクレーンを動作させてはならない。

4.3 無線に関する表示
無線に関し、次の事項を記載した銘板が操作装置及び受信装置の見やすい位置に取付けられているものとする。
・使用周波数、識別符号

4.4 通転操作のインターロック
4.4.1 異なる動作間及び正逆動作間のインターロック
同時に作動したときに危険な状態を引き起こすおそれのある (例えば、互いに逆向きの運動を起こさせる) ものは、このような誤操作を防く インターロック機能を備えなければならない。

4.4.2 複数の操作装置間のインターロック
1台のクレーンを複数台の操作装置で運転できる
構造の無線操作式クレーンにあっては、 1台の操作装置から運転を選択した場合、他の如何なる操作装置からも運転が出来ないようなインター ロックを設ける。

4.4.3 始動時のインターロック
無線による運転の始動は、操作装置からの指令信号のうち、すべての動作信号がオフの状態でなければ始動してはならない。

4.5 クレーン本体
4.5.1 無線操作式クレーンの定格速度
無線操作式クレーンの横行速度及び走行速度は,それぞれ0.66m/s以下とすることが望ましい。

4.5.2 横行・ 走行用ブレーキ
無線操作式クレーンの横行装置及び走行装置には制動ブレーキを設けることを原則とする。

4.5.3 電源開閉器
機上で点検、調整、補修などの作業をする可能性の あるクレーンは、個々のクレーンごとにそのクレーンのすべての電源を遮断できる電源開閉器を設ける。

4.5.4 運転操作切替スイッチ落等の危険がないこと。
運転室操作やペンダントスイッチ操作と無線操作が併用となっているクレーンは、運転切替スイッチを設け、切り替わった状態を操作者から見える位置に表示する。

4.5.5 受信アンテナの設置
受信アンテナは、無線操作者から見える位置で、電波の受信に支障のない位置に固定する。

4.5.6 方向表示板
クレー ンガー ダの下など運転者が見やすい位置に、操作スイッチの方向表示のうち水平動作に対応する表示板を設ける。

4.5.7 通電表示灯
トロリ線には、通電されていることが容易に識別できる通電表示灯を設けることが望ましい。

4.5.8 警報装置
無線操作式クレーンには、電鈴、ブザー等の地上作業者に対する警報装置を設ける。

4.5.9 受信装置の保護
受信装置に接続される直流制御用電磁接触器には、受信回路保護のためにサージアブソーバを取付ける。

5. 使用基準

5.1 設置
無線操作式クレーンを設置(無線化改造を含む)するにあたっては、次の事項に留意する。

5.1.1 外来電波の調査
外来電波等の発生源を調査し、必要に応じて防護措置を講ずる。

5.1.2 周波数の選定
同一地域、又は事業場において未使用の周波数を選定する。 未使用の周波数がない場合は、混信のおそ れのない周波数を選定する。

5.2 管理
無線操作式クレーンを使用するにあたっては、次の事項に適合するよう管理する。

5.2.1 作業環境の維持
作業環境を常に良好な状態に維持するように努める。
a) 作業に必要な作業空問及び通路が確保されていること。
b) 運転者が安全に運転できる視界が確保されていること。
c) 歩行通路又は作業床は、つまづき、滑り、落下等の危険がないこと。
d) 照明は、正常な作業を妨げない程度に適当な照度が確保されていること。
e) クレーン及びその周辺は、クレーンの点検又は補修を行う場合に、作業者が感電、墜落等のおそれがなく、容易に、かつ、安全な作業を行うに適したものであること。電波の受信に支障のない位置に固定する。

5.2.2 無線周波数の管理
a) 事業場別に無線周波数を管理し、同一周波数使用による混信を防止する。 また、周辺地域の無線周波数の使用状態にも配慮すること。
b) 外 部から同一周波数使用の無線機器が持ち込まれないよう管理すること。

5.2.3 取扱い責任者の選任と任務
無線操作式クレーンの運転の業務について必要な資格を有する者の中から、無線操作式クレーンごとに取扱い責任者を選任する。 また、その者の氏名等を見やすい箇所に表示するとともに、その者に次の事項を行わせる。
a) 機器の管理及び操作装置の電源スイッチがキ一スイッチの場合は、キーの保管、管理をすること
b) 予備の操作装置を備えている場合は、電池を抜き取り、電源スイッチを「オフ」にしておくこと。 電源スイツ キースイッチの場合は,キーを抜き取っておくこと。
c) 非常用予備電池がある場合は、良好な充電状態を保つこと。
d) チェックリスト等により作業開始前点検の実施を確認すること。
e) 異常等の報告を受けた場合は、直ちに、使用禁止、補修その他の必要な措置を講じること。

5.2.4 通転作業についての資格
無線操作式クレーンの運転作業を行う者は、その種類と能力に応じクレーン等安全規則に定められた資格を有する者、又は、同規則に基づく特別教育を受けた者とする。 また、無線操作式クレーンに新たに従事させる場合は、その者に無線操作式クレーンの操作に関する安全教育を行う。

備考: 運転の資格
1. つり上げ荷重5t未満: クレーンの運転の業務に係る特別の教育を修了した者
2. つり上げ荷重5t以上: クレーン運転士免許を有する者

5.2.5 玉掛け作業についての資格
玉掛け作業を行う者は、その種類と能力に応じ法令に定められた資格等を有する者とする。

5.2.6 玉掛け作業者等の配置
無線操作式クレーンを用いて作業を行うときは、つり荷の形状、周囲の状況等を考慮し、次の要員を配置する。
a) 見通しの悪い場所での作業や、共づり作業又は他の作業者に危害をおよぼすおそれがある作業には、運転者のほかに合図者を配置すること。
b) つり荷が大形又は長尺物である場合は、運転者のほかに、必要に応じて玉掛け作業者、合図者及び誘導者を配置すること。

5.3 運転
無線操作式クレーンを用いて作業を行うときは、クレーン運転一般の注意事項のほかに、運転者に次の事項を遵守させ、安全な運転を行わせる。

5.3.1 作業開始前の措置
a) 5.4.2項の作業開始前の点検を実施するか,又は実施されたことを確認すること。
b) 点検又は補修中でないことを確認すること。
c) 無線操作式クレーンが複数台ある場合は、操作装置とクレーンの対応が正しいかを確認すること。
d) 操作者の腰に固定する操作装置を使用する場合は、誤操作を防止するため、腰及び肩ベルトは確実に着用すること。

5.3.2 無線操作式クレーン運転中の留意事項
a) クレーン操作を行わないときは、操作装置の電源は「オフ」にしておくこと。 電源スイッチがキースイッチの場合は、キーを抜き取っておくこと。
b) つり荷がよ く見える位置で運転し、周囲の安全を確認すること。
c) 運転するときは、足元の安全を確保するとともに安全な通路を通行すること。
d) 操作装置の表示とクレーンの作動方向の表示とを常に確認して運転すること。
e) 安全通路、車両通路を横断するときは、徐行するとともに警報を鳴らす等により周囲に注意をうながすこと。
f) 走行・ 横行ストツパに当てて止めるような運転をしないこと。
g) 一人の運転者が2 台以上の操作装置を同時に操作しないこと。
h) 操作は、 3 動作以上を同時に行わないこと。例えば、天井クレーンでは巻上げ、横行、走行、ジブクレーンでは巻上げ、起伏、旋回などの3 つの動作を同時に操作してはならない。
i) クレーンの作動中は直接つり荷及び玉掛用具に触れないこと。
j) クレーン等安全規則第29条で禁止された場合以外であっても、原則としてつり荷の下及び荷の転倒のおそれのある範囲には立ち入らないこと。 また、作業者を立ち入らせないこと。
備考: 本指針では、すべてのつり荷の下及び荷の転倒のおそれのある範囲に立ち入らないことを原則としている。 ただし、止むを得ず立ち入らざるを得ない場合には,荷が安定し静止していることを確認し,かつ、十分な安全対策を講じること。
k) つり荷の反転作業を行う場合、運転者や玉掛け作業者等のいる方向には反転しないこと。
l ) リフチングマグネツト又は真空吸着機を用いて作業を行う場合、つり荷の高さはできる限り低くして運搬すること。
m) リフチングマグネツトのような強力な磁気を発生する装置の近くでは、押しボタンスイッチにリードスイッチやホール素子等の磁気を使ってオン・ オフするスイッチ素子を使用した操作装置を使用してはならない,
n) 運転者は、荷をつつたままで身体から操作装置を離さないこと。 また、操作装置の制御範囲から外れないこと。

5.3.3 作業終了時の措置
a) クレーンは、定められた位置に停止させるこ
b) 玉掛用具は取り外し、フック等のつり具は2 m以上の高さに巻上げておくこと。
c) 操作装置の電源は「オフ」にしておく、電源スイッチがキースイッチの場合は、キーを抜き取り、取扱い責任者に返却すること。
d) 操作装置の電池は必要に応じて充電や電池交換を行うこと。
e) 操作装置は塵埃、油などをきれいに清掃し,所定の場所に保管すること。
f) 運転中に気がかりになったことがあれば、取扱い責任者に報告すること,

5.3.4 異常時の措置
a) 運転中に停電したときは、操作装置の電源及びクレーン側の主電源を切り、周囲の安全を確保し、通電を待つこと。
b) 連転中に無線装置の異常又はクレーンの異常を認めたときは、直ちに作業を停止する。 また,操作装置の電源及びクレーン側の主電源を切り,取扱い責任者に報告し、指示を受けること。

5.4 定期自主検 及び作業開始前点検等
無線操作式クレーンについては、クレーン等安全規則に基づく定期自主検査及び作業開始前点検を実施するほか、次による。

5.4.1 検査責任者の選任と任務
検査等を行うときは、検査責任者を選任し、その者に次のことを行わせる。
a) 検査等を行うときは、原則として電源開閉器を遮断し、当該開閉器に検査中である旨の表示をする等の措置を講じること。 また、電源開閉器が地上にある場合には施錠等の措置を講じることが望ましい。
b) 操作装置を用いて検査等を行うときは、検査等に従事する者以外の者により操作されないように、検査に従事する者が携帯するか、又は手元に置いて行うこと。
c) 定期自主検査を行うときは、その旨をクレーンガーダ等に表示し、周知させること。 また、必要に応じ、監視人をおく等により、クレーン下への立入禁止措置を講じること。
d) 検査等が完了したときは、その結果を取扱い責任者に報告すること。

5.4.2  作業開始前点検
作業開始前点検は、クレーン等安全規則第36条に基づき実施し、特に操作裝置に関する次の事項についても点検する。
a) 操作装置の各スイッチの外観上の損傷の有無
b) 電池の残量確認
c) 停止機能の確実な作動の確認
d) 各スイッチの動作表示、作動方向表示の有無
e) 各スイッチの円滑な動きの確認、相反する動作のスイッチ間のインター ロック動作の異常の有無
f) 各スイッチの表示どおりのクレーン作動の確認、動作タイミングの異常の有無

5.4.3 定期自主検査
定期自主検査は、「天井クレーンの定期自主検査指針(昭和60年自主検査指針公示第8 号) ・ 同解説(昭和61年日本クレーン協会編、労働省労働基準局安全衛生部安全課監修) 」及び「ホイスト式クレーンの定期自主検査実施要領 (_平成5 年日本クレーン協会編、労働省労働基準局安全衛生部安全課推薦)」(以下「指針等」という。) により行う。
なお、これ等に含まれないものについては、指針等に準じ、又は製造者のメンテナンスマニュアル等による。
備考: 定期自主検査の結果の記録はこれを3 年間保存しなければならない。

5.5 補修等
補修にあたっては、補修責任者を選任し、その者に次の事項を行わせる。 .
a) 補修を行うときは、必ず電源開閉器を遮断するとともに、当該開閉器に補修中である旨の表示をする等の措置を講ずること。 また、電源開閉器が地上にある場合には施錠等の措置を講じることが望ましい。
b) 補修を行うときは、その旨をガーダ等に表示し、周知させる。 また必要に応じ監視人をおく等により、クレーン下への立入禁止措置を講じること。
c) 操作装置を使わずに補修するときは、操作装置の電源スイッチを「オフ」にするとともに,電池は抜き取っておくこと。 電源スイッチがキースイッチの場合は、キーを抜き取っておくこと。
d) 操作装置を使って補修をするときは、当該クレーンが作動しないようクレーンの電源を切ってから行うこと。
e) クレー ンガーダ等の構造部分、原動機・ ブレーキ・ つり上げ機構等の機械部分の補修を行う場合は、予め、クレーン等安全規則に基づく変更届の必要の有無及び補修方法について専門家と協議すること。
f)  2名以上の作業者を同時に作業させる必要があるときは、必ず作業責任者を指名する。 また,その者に「作業手順」「作業分担」「合図方法」などを定めさせ、その確認をした上で作業を開始させること。
9) 補修完了後、所定の性能及び安全性が確保されていることを確認すること。
h) 補修が完了したことを取扱い責任者に報告すること。
i) 補修を行った日付及び補修内容を記録し、これを3 年間保存すること。

解説

Ⅰ. 規格制定の経緯

昭和60年に当時の労働省から当協会に 「無線操縦等速隔操作方式クレーンの安全基準に関する研究」の調査研究の委託があり、昭和61年3 月末にその報告書を取りまとめた.
その後、当協会において独自に前述の報告書の一 節である床上操作方式クレーンの各項目について見直しを行い、平成14年4 月に日本クレーン協会規格JCAS1001-2002 (ペンダントスイッチ操作式クレーンの安全に関する指針) を制定した。
これに引き続き、当協会のクレーン委員会の無線操縦・ 床上操作クレーン分科会において、やはり前述の調査研究報告書の一節である無線操作方式クレーンの各項目について見直しを行い、ここに「無線操作式クレーンの安全に関する指針」 として取りまとめたものである。

Ⅱ. 各規定項目の解説

2. 適用範囲
クライミングクレーンは、主にビルの建設現場等に設置され、建設の進行とともに主として操作する階が上昇して行き、操作する範囲、足場の違い等の作業環境が変わる等、他の無線操作式と異なる運用要件がある。 したがって、クライミングクレーンに無線操作方式を採用する場合は、クライミングの都度、この指針の要求事項への適合性を確認する必要がある。
また、この指針は、電波を使用した無線操作式クレーンを前提に規定したが、赤外線を使用し.たクレーンに適用してもよい。
なお、無線操作式クレーンの操作措置は、電波法の 「免許を要しない無線局」 に該当する。

4.1.1 電源スイッチ
操作装置の操作者を限定する場合は、キースイッチやアクセスコードを必要に応じて備えなければならない。
ここでいうキースイッチは、「オフ」の位置でキーが抜き取れ、「オン」 の位置では抜き取れない構造のものとする。 また、アクセスコードとは、電源「オン」後、いくつかの操作スイッチ等を定められた順番に押すことにより、クレーンの操作が可能となる機能をいう。

4.1.2 停止スイッチ
無線操縦操作装置の停止スイッチは非常停止と同じ機能を有するが、JIS B9960-1 :1999 「機械類の安全性一機械の電気装置一第1 部: 一般要求事項」では、非常停止は電気機械的に配線した部品のみを使用すること。 さらに、電子的ロジック(ハードウエア又はソフトウエア) に依存してはならず、無線操縦操作装置を経由したコマンドの伝達によるものであってはならないと規定している。
このため、操作者に注意を促すことを目的に、停止スイッチとして赤きのこ型スイッチを使用することが望ましいが、非常停止を示すマー キング又はラベリングをしてはならない。
(参考 JIS B9960-1 :1999 「機械類の安全性一機械の電気装置一 第1 部: -般要求事項」9.2.5.4.2「非常停止」、9.2.7「ケー ブルレス制御」,9.2.7.3 「停止」)

4.1.3 操作スイッチ
「ガードリング」とは、ボタンの周囲を取り巻く保護物で、不用意な操作で押しボタンスイッチが作動することを防ぐものである。 また、「有効な高さ」 とは、ガードリングの高さまでボタンを押し込んでも作動しない高さをいう。
操作装置の構造が、不用意な操作で押しボタンスイッチ やジョイスティックスイッチが作動しない構造iこなっている場合には、ガードリングを省略できる。

4.1.5 操作スイッチ等の表示と配列d)
1 緑は、正常(安全) を表わす色であるため、「電源オフ」及び停止スイッチに使用してはならない。
1(参考 JIS B9960-1 :1999 「機械類の安全性一 機械の電気装置一第1 部: 一般要求事項」10.2.1 「色」)

4.1.7 電池電源の操作装置
「クレーンを危険のない状態にするのに必要な時間」は、クレーンの設置状態、作業環境及び作業内容により、各々変わってくるので、各事業所で規定することが望ましい。

4.2.2 制御の制限
受信装置は、受信した指令信号の中から操作装置の識別符号を検出し、自分の識別符号と比較して一 致した場合のみクレーンを動作させる。

4.3 無線に関する表示
識別符号とは、通信の相手を識別するための符号であって、操作装置から指令信号に含めて送信される。

4.5.1 無線操作式クレーンの定格速度
本文では、横行速度及び走行速度は、それぞれ1.66m/s以下とすることが望ましいと規定している。ただし、通路が十分に確保され、視界が良好である等 安全が確保できる場合は1 .Im/s以下としてもよい。

4.5.2 横行・走行用ブレーキ
横行・走行装置にブレーキを備えない場合、クレーン本体又はトロリ停止位置が不確実なことなどの不具合が生じるので、制動ブレーキを備える ことを原則とする。
ただし、クレーン構造規格第19条には除外規定があるので、十分に安全であることを確認の上、状況に応じて横行用ブレーキを省略できる。

5.2.3 取扱い責任者の選任と任務
予備機は、連用中の操作装置と同一の指令信号を発信するものである。 したがって、クレーンの動作が運用中の操作装置の操作によるものか、予備機の操作によるものか、又は、運用中の操作装置若しくは予備機のどちらの操作でもなく停止してしまうのか、特定できないで非常に危険である。
この為、予備機から不用意な指令信号を発しないように、予備の操作装置の電池やキースイッチを抜き取って管理者が保管するなどして、多重の安全対策を図るものとする。

5.3.2 無線操作式クレーン通転中の留意事項 i)
「つり荷及び玉掛用具に触れない」には、荷の着床時や巻上げ、運搬時に位置決めや回転防止、接触防止が必要な場合に、手鈎や案内ロープを用いることが含まれている。

5.3.2 無線操作式クレーン通転中の留意事項 j)
クレーン等安全規則第29条では、クレーンの作業時、つり上げられている荷の下に労働者を立ち入らせてはならないとして、第1 号から第6 号の条件を定めている。
無線操作式クレーンの作業にあっても、、この規定に従うのは当然であるが、本指針で立ち入り禁止の枠を 「つり荷の下及び荷の転倒のおそれのある範囲」に広げたのは、この種の事故が少なくないことによる。

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